思い出の日本人メジャーリーガー 城島健司 その1

新しい年になりプロ野球の契約更改もほとんどの選手が終了したようです。
助っ人外国人選手もぼちぼち決まり各チームはどんな状況となったのか…と思い今更ながら気付いたことがありました。
それは阪神タイガースに西岡、福留とメジャー帰りの選手が新しく入団したこと。

(かあ〜こりゃ阪神は凄いことになったな。メジャー経験者がこんなに揃っちゃって。城島もいるしなあ…)

ん?…

ハイ、残念ながら城島選手は引退されました、昨年をもって。

そうだったそうだった…)

日本人初のキャッチャーとしてのメジャーリーガーだった城島選手。
一体どんな苦労があったのだろうかと偶然にも彼の本を図書館で借りてきて読み終えたばかりでした

そんな城島選手(引退したが一応この呼称でいく)に私はいくつかのエピソードがあるのですがその本を読みながら思い出した出来事を紹介します。

1つ目は私がメジャーリーガーで一番最初にサインを貰ったのは城島選手でした。
あれは2007年のオールスター前だったか。

その年のオールスターはイチロー選手がMVPを獲得したことで有名ですが私はその試合が行われる前に開催地であるAT&Tパークを訪れチームショップで買い物をしました。
オールスターロゴの入ったボールとキャップそれにイチロー選手のバッティング・ジャージなど。
その時購入したボールを持ってコロシアムのマリナーズ戦を観戦しに行きました。

当時私はサインを貰う方法など全く知らなかったのですがマリナーズ側のベンチとブルペンのちょうど間辺りのスタンドの最前列で選手の練習を見ていた時私の前に突然城島選手が出て来てキャッチボールを始めたのです。

お〜本物だ!)

ちょっと興奮してきた私は思わず

「城島さん!サインもらえますか?」

と声を掛けてしまったのです。

通常練習中にサインを求めるのはNGです、特にこの場合キャッチボールの最中ですから。
しかしあまりの興奮状態とサインを貰う時のルールを知らずにいた私は思わず声を出してしまったのです。

すると城島選手は

「終わったらするから待って!」

と早口で答えられ私もハッと我に返り恥ずかしい思いをしたのを覚えています。

しかし城島選手は約束通りキャッチボールが終わったあとサインをして下さいました

人生で初、メジャーリーガーから頂いたサインは城島選手でした。

うれしさとサインをもらうルールを知らずに恥ずかしい思いをしたのと練習の邪魔をして申し訳なかったのといろんな感情が混ざって複雑な心境だったことを今でも覚えています。

それからこんなこともありました。

あるマリナーズ戦を観に行って試合前の練習をライトフェンスの近くで見ていた時です。
私の横に2人の男の子がいました。
するとその内の1人の男の子が近くに飛んできたボールを拾いに来た選手に声を掛けそのボールをもらっていたのです。

よしっ!俺もいくぞ…)

私の前では城島選手が誰かとしゃべっています。

俺もいっちょやってみるか…)

と会話を終えた城島選手に向かって

城島さーん、ボール下さ〜い!)

すると城島選手が後ろ(私の方を)を振り向いて

持っーてないも〜ん)

と両手を広げます。

私もめげずに

(ボールが)来たらでいいですう!)

と返すとガクッと城島選手がリアクションを返してきました。

しばらくすると城島選手のところにボールが。
そして振り向いて私を指さしてボールを投げてくれました。
私がグローブを持っていたので距離にして約10メートルか、速い球をビュッ!と投げてきました。

ズぼッ!と革のグローブに鈍い音と同時に球の重みと速さが手に伝わってきました。

やっぱプロの投げるボールは違うな…)

お礼を言うと城島選手は振り返らずに軽く左手を挙げて応えてくれました。

おお〜また一つ記念になったぞ!^0^)

と、

喜んでいたのですがその様子を隣で見ていた2人の子供の内まだボールをもらっていない子が私の顔を下からじーっと見ています。

…おいおい何だよ…。そんな目で俺を見るなよ…ーー;)

私は見て見ぬふりをしようと思いましたがどうにもバツが悪い気分になります。

そのうちもう一人の自分が頭の中に浮かんできてこうささやきます。

いいのか?そんな大人気ないことをして?日本人の大人がボールもらって喜んですぐ隣に居る子がもらえないのを知ってお前は黙ってるのか?)

まいったな…ーー;)

もう一人の私がさらに続けます。

くれてやれよ、城島ならもう1球頼めばくれかもしれないじゃないか…)

ボールをもらってこの間約10秒。
左手にはまだ城島選手の投げたボールの威力で手のひらがじんじんしていました。

まっいいか…)

私はどこか釈然とはしませんでしたが2人の男の子の内1人がボールを貰えて1人が貰えない心境を考えると可哀そうだし頼めば城島選手がもう一度投げてくれそうな予感もしたので私のボールをその子にあげました。

その子は格別うれしそうな顔もせずもらって当然というような感じでボールを掴むと友達と一緒に私から少し離れて行きました。

何だよ、せっかくあげたんだからもう少しうれしそうな顔をするかありがとうぐらい言いやがれ…ーー;)

城島選手との思い出の品を手放した私は失ったものを取り戻すべくもう一度城島選手にボールをくれるようお願いしようと思いました。

ところがこの後思わぬ展開が待ち受けていました…