一兎を追い続けたら三兎を得た不思議な体験 その1〜ジャック・ハウエルからもらったサインは…〜

今朝ダイアモンドバックスの主力打者であったジャスティン・アップトンがトレードされたニュースが飛び込んできました。
トレード先は兄の元レイズのB.Jアップトンが移籍してきたブレーブス
ということでついに才能有る兄弟メジャーリーガーが同チームでプレーすることとなりました。

私の印象だとこの兄弟はそこそこ活躍してるもイマイチ才能が発揮されていない感じ。
オークランドで観るのは同じアメリカンリーグのレイズにいたB.Jなのですが気持ちの入りきっていないプレーもちらほらあった気がします。
(ちなみにダラス・ブレーデンの完全試合の最後のバッターはB.Jだったような…)
まあ良く言えばリラックスして力を抜いた状態でプレーをしていただけで決して手を抜いていたりしたわけではないのでしょうが空振り三振、チャンスでの凡退や走塁アウトがあった時などはそう見えてしまったことは確かです。

さて一方弟のジャスティンについて。
実は私ちょっとしたおもしろい経験をしました。

それは2010年のシーズンにAT&Tパークにジャイアンツ対Dバックスの試合を観に行った時のことです。

試合前私はあるコーチにサインを貰おうとDバックスのベンチの近くにいました。
そのコーチとはヤクルトスワローズと巨人でプレーしたジャック・ハウエルです。

ハウエルは1992年に来日し3年間ヤクルトで、その後1年間巨人でプレーした内野手です。
来日1年目の92年には打率.331 本塁打38本、打点87を記録し首位打者本塁打王のタイトルそしてセリーグのMVPも獲得。
翌93年はヤクルトの日本シリーズ優勝に貢献。
ヤクルト黄金期の強打者として3年間で336安打、86本のホームラン、231打点、打率.301というすばらしい成績を残しました。
(巨人ではそんなに活躍しませんでしたが…)

メジャー復帰後は日本ほどの成績は残せず99年に引退、2009年途中からDバックスの打撃コーチを務めていました。

その日私はハウエルのエンジェルス時代のカードとヤクルト時代の特別なカードを用意してました。

バッティング練習の用意がされてるとハウエルが姿を見せます。

「ジャッーク、ミスター・ハウエル!」

するとハウエルが私を見つけ近づいて来ます。

私の周りにいたアメリカ人は誰も彼の日本での活躍を知りませんから

(誰だこのジャックというコーチは?なぜこのジャパニーズはこのコーチを知ってるんだ?)

というような視線を感じました。

ハウエルにサインをくれないかと頼むとハウエルは懐かしそうにカードを眺めながら

「ほう〜俺はこのカード持ってないなあ…俺にくれないか?」

と冗談ぽっく言ってきたので私が悪いがこの1枚しかないからダメだ、ゴメンネ!

と言うと

「そうか…そりゃ残念だなあ(苦笑)」

と言いながらその2枚のカードにサインをくれました。

どうやら自分のカードを集めているらしいのです。

するとハウエル、

「ちょっとこのカードを借りてもいいか?みんなに見せたいんだ」と言う。

私がいいよと言うとそのカードを持って内野をまわりながら選手やコーチに見せびらかしていました。

一周した後ハウエルが私のところへ戻ってきてカードを返してくれるとお礼を言ってくれて練習に戻って行きました。

(ん〜何か断って悪い事しちまったかなあ…)

若干後味の悪い気持ちでした。

するとしばらくしてハウエルがまた私の所に来ます。

「おい、そのヤクルトのカードなんだけどやっぱりほしいなあ。何か俺と交換しないか?」

と言ってきたのです。

私がえっ!?とびっくりしてしばらく悩んでるとハウエルは

「誰かのサインをもらってきてやるぞ!誰がいい?クリス・ヤングか?アップトンか?」

私はグランドを見渡し誰かいるかなあと眺めたのですが正直コイツだ!という選手がいませんでした。

と言うより私はヤクルトのカードにハウエルのサインがほしかったわけで別にその他の選手はそれほど熱心ではなかったのです。

(ん〜まいったなあ…ハウエルはどうしてもこのカードをもらっていく気満々だしなあ。しかしこのカードはちょっと特別だからもう手に入らないしなあ…というかあんたこのカードに自分のサインを入れちまっただろうに!)

目の前ではハウエルが私の答えを待ち構えています。

困ったぞ…ー0−;)

「どうしてもほしい?」

と私が聞くと

「おお!ほしい!頼むよ!」

と、ハウエルが喜びます。

しまった!余計なひと言を…NOと言えない日本人とはこのことか><)

彼の迫力ある蒼い瞳の前に思考も身動きも取れなくなります。

ん〜だめだこりゃあ、完全というかこの流れは俺があげなきゃいけない感じだぞーー;)

するとこのやり取りを隣で聞いていたアメリカ人が私を肘で小突きながら

「おい!何やってんだよ!アップトンのサインが貰えるんだぞ!」

と私にささやきます。

それでも私は「ん〜」と悩んでると今度は後ろから

「ここは絶対交換した方がいいですよ」

と何と日本語で囁かれます。

もちろん私の知らない方ですがやはりこの方も隣にいるアメリカ人と同じことを言う。

まあエンジェルスのカードにサインをしてもらったしハウエル本人がここまでほしいと言ってるんだから彼にあげるか…)

そしてハウエルに、

「じゃあヤクルトのカードはあなたにあげるからアップトンのサインをもらってくれる?」

と私が言うとハウエルはバッティングゲージの後ろに居たジャスティンの所に行き私を指さして説明した後ボールにサインをもらってそれを私のところへ届けてくれました。

おお〜アップトンのサインかあ!)

何だかんだであのアップトンのサインが手に入ったのですからそりゃあうれしかったです。

そしてこれでハウエルとの取引成立…終わるはずでした。

ところが…

(続く)