一兎を追い続けたら三兎を得た不思議な体験 その2〜ジャック・ハウエルに感謝〜

約束通りジャスティン・アップトンのサインをもらってきて私からヤクルト時代の自分のカードを手に入れたハウエル。

思わぬ「取引」でこの日誰にもサインをしなかったジャスティン・アップトンのサインをもらえ喜んだわたくし。

双方が「WIN WIN」のはずでした。

ところが…

この成り行きを後ろで見ていた私のサイン仲間の後日証言談であることが判明します。

それは私は全く覚えていないしそんなつもりはさらさら無かったのですが…

私はハウエルに相当抵抗していてアップトンのサインを貰ったにも関わらずかなり不満な様子だったそうなのです!

え〜それホント???

まあ私のその仲間達も仲間同士でひやかしたり笑い話のネタづくりのために話を大袈裟に、時には脚色するので信じがたい部分もあるのですが周りの人間にはそう見えたようです。

ただそれはカードをあげたくない私に対してハウエルが半ば強引にカードを譲ってもらおうとしていたこともみんなはきちんとわかっていたみたいで私とハウエルのやりとりをおもしろおかしく見ていたのです。

さて私のそんな態度にハウエルも気付いたのか気まずかったのかわかりませんが私がボールに書いてあるアップトンのサインをじーっと眺めていると声を掛けてきます。

「おい、明日か明後日も来るか?」

この日は週末3連戦の初戦で金曜日だったのですが土日は正直来る予定はありませんでした。

ところがまだこのシーズンはAT&Tパークのチケットが安く手に入るのと何となく直感で来たほうがいいと思い思わず

「YES!」

と返事をします。

するとハウエルは

「そしたらもう一度俺に声を掛けろ、他に何かあげるから!」

へっ!?まだ何かくれるの?

何だかわからないけど来ればいい事がありそうだ。
私は帰りに翌日のチケットも購入し土曜日に再びAT&Tパークを訪れました。

翌日の試合前、前日と同じ場所で待っているとハウエルが顔を出します。

「ハイ、ジャック!」

私が手を振るとハウエルが来ます。

「おう!今日は何がほしい?」

私(へっ?何か用意してくれたんじゃないの?)

とまあ若干の意思疎通の差があったようですが好きなものをやるといった感じです。

何かくれるんだよなあ…何がいいかなあ…)

せっかくの機会だし普段もらえなそうでまだ手にしたことが無いもの…
あっ!、あったあった!

「ヘイ!ジャック!折れたバットに君のサインをしてくれないか!」

メジャーでは折れたバットや時には使用済みのバットをファンにくれることがあります。
さすがにまだ使えるバットをもらおうとは思いませんでしたが折れたバットならくれるかな、そしてそれにハウエルのサインをもらおう、と。

ハウエルはへっ?って顔をするので私はすぐに紙とペンを用意しその旨と書いてほしいメッセージの内容を書いて彼に渡します。
するとそれを読んだハウエルが近くにいたスタッフにバットを持って来いと指示します。

しばらくするとベンチ裏からそのスタッフが黒いバットを持ってきてハウエルに渡します。

ハ「おい、シルバーかホワイトのペンはあるか?」

バットが黒いので私に目立つ色のペンはあるかと聞いてきたのです。

私はすぐにバッグから銀色のペンを取りだしハウエルに投げます。

そして私が紙に書いたメッセージをハウエルは確認しながらサインをしてくれました

バットには私の名前と私へのメッセージで「BEST WISHES!!」、それにハウエルのサインにヤクルト時代の背番号8、そして1992年のセリーグMVPのサインを書いてくれました。

ハウエルも
「どうだ!こんな感じでいいか!?」

私も
「パーフェクトだジャック!いろいろありがとう!」

ってな感じでようやくお互い満遍な笑みで合意!??

かつて日本で活躍した偉大な助っ人外国人選手と20年近く経ったこの時まさかアメリカの球場でこのようなやりとりができるとは想像だにもしませんでした。

私もいろんな選手にボールやらベースボールカードにサインを貰っていますがバットにもらったのはこのハウエルのみです。

ちなみにバットの持ち主はクリス・スナイダーという選手。

日本に持ち帰る時登山用の長細い大きなバックパックに無理やり詰め込んでやっとこさ持ち帰ってきました(^^;)

ハウエルはこのシーズンが終了後Dバックスの打撃コーチを解任され今はどうなってるかわかりません。

しかしあのヤクルト黄金期ともいえる時代に主力打者として活躍した選手として間違いなく日本のプロ野球ファン(私と同じぐらいの年齢、もしくはそれ以上の方達)には記憶に残る名助っ人外人だったと思います。

ジャック・ハウエルよ!いろいろアリガトね!^^)

さてこの後のことなんですが…

この日も私とハウエルのやりとりを見ていた私のいつものサイン仲間が今だに声を大きくして言います。

おい!このShinはベースボールカードたった1枚でカードのサインとアップトンのサイン(ボールへの)とバット(もちろんメッセージ&サイン入り)を手に入れたとんでもねえヤツだぞ!)

と。

何かあるといつも突然思い出したようにはしゃぎながら私をからかうのですがもちろん間違ってはいません。

ただちょっと言い方が大袈裟だとは思うけど(笑)

しかし…

何か日本人じゃないとわからないこの経験に少しだけ優越感を感じたことはありました。

それもこれも日本でプレーした選手のおかげです。

時代は変わり助っ人と呼ばれ日本にきたメジャーの選手は活躍して当たり前だとか特別な人間と扱われていましたが最近はメジャーでのステップアップのため1,2年日本でスキルアップをしてからメジャーに戻るという傾向にあるようです。

しかし

例えそうだとしても彼らのチャレンジ精神と成功を祈って止みません。

ブラッド・ペニーグリーンウェルは別だけどねーー;)